「水彩画やアクリルアートを始めたいけど昔から絵を書くのが苦手」と言って、画家をあきらめる人も多い。だけど、今は絵が描けなくても画家になることができる時代です。
そう言ってしまうと活躍している画家に怒られてしまいますが、実際、絵の苦手な人でも画家として活動をしている人はたくさんいます。
その一つが、パソコンやタブレットで描く(制作する)デジタルアート作家です。
デジタルアートと言うと幅が広いですが、ここで話すデジタルアートは、Adobe社が提供している画像編集ソフトPhotoshop(フォトショップ)で作るアートのことです。
以前は僕も、Photoshopを使ったデジタルアート作家として活動をしていました。
今回は、画家を目指したくても手描きの絵が描けずにあきらめようとしている人のために、今の時代に合ったデジタルアートについて話そうと思います。
目次
デジタルアートとは
デジタルアートとは、パソコンやタブレットなどを使用して作るアート作品のこと。
デジタルアートと聞くと、有名映像会社のVR(ヴァーチャル・リアリティ)やAR(拡張現実)の技術を使った、映像系アートが浮かびますよね。
だけどここで話すデジタルアートは、画像編集ソフトPhotoshopでつくる静止画のアート作品です。
このPhotoshopを使ったアートの呼びかたにもいろいろあって、次のように呼ばれています。
- デジタル絵画
- デジタルイラスト
- グラフィックアート
- コラージュアート
デジタルアートは、イラスト、ドット作品、合成作品、3D作品など、デジタルアートの中でも色々なジャンルがあり、作家によってその世界観が違うところに魅力があります。
ちなみに僕のデジタルアートは、一眼レフで撮影したモデルや風景の写真を素材にしてPhotoshopで幻想的な世界を表現した作品。
例えば、下記のように撮影したモデルの写真を使って加工や合成を加えて、違和感のない幻想的な世界を創り上げます。
そのデジタルアートに使う素材(写真)は、人物だったり、風景だったり、椅子だったり、時計だったり。
時には写真を撮り歩いていて、その時に心が揺さぶられた風景を写真に撮って、その写真にワンポイントプラスしてデジタルアートを作ることもあります。
それが下記の『静寂な世界』と言うデジタルアート作品です。
この『静寂な世界』と言うデジタルアートが生まれたストーリーはこちら。
僕が作るデジタルアートは全てPhotoshopを使っていて、2023年のAIの進化もあって『Photoshop × AI』を掛け合わせたデジタルアートを作ることもあります。
最近ではAI機能が搭載された『Luminar Neo(ルミナーネオ)』と言うソフトもあるので、被写体を切り抜いたりホコリ除去が簡単にできるものもあります。
実際に僕もLumina Neoを使っていますが、デジタルアートを制作するには効率よくて重宝しています。
Luminar Neo(ルミナーネオ)レビュー。RAW現像ソフトLuminar Neoを使った正直な感想を公開。気になるけど海外のサイトから購入しなければいけないから不安という写真家は多い。Lightroomとの違い、Luminar Neoをお得に購入する方法を忖度なしで公開しています。
そう考えると、昔に比べてデジタルアートを始めやすくなってきたのではないでしょうか。
今後は広がるデジタルアート市場
現在の日本では約60万人の芸術家・クリエイターがいると言われています。そこから考えると、デジタルアート作家はまだ少ない方かもしれません。
なので競合が少ないうちからデジタルアートを始めることが、芸術家としての知名度を上げるチャンスでもあります。
デジタルアートの価値が上がる『NFTアート』
デジタルアート作家が増えてきた理由の一つに、NFTアート(※)に興味をもつ人が増えたこともあります。
NFTアートとは、偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ、いわゆる代替えできないデジタルデータで、一点物の価値があるデジタルアートを作ることができると言うことです。
※NTFアートについては、詳しく解説している動画をYouTubeで見つけたので、興味があればそちらを参考に見てください。
実際に僕もNFTアートを始めてみましたが、これが少し複雑で、仕組みを作ったまでは良かったんですけど運営が難しく、しばらく放置状態でした。だけど2023年に、あるキッカケからNFTアートを再開することにしました。
ちなみに僕のNFTアートがこちら。
まだ作品は少ないが、だんだん仕組みがわかってきました。
日本では「NFTは詐欺だ」と言われることも多いですが、世界に認知されているマーケットプレイスを使えば、安心してNFTの売買ができます。
そうやってデジタルアートの需要が上がってきているため、芸術の世界もアートスクールやオンライン講座でデジタルアートを教えるところも増えてきました。
芸術の世界も、時代に合わせてスキルを学ぶことも必要だと言うことです。
子供の表現力がデジタルアートの可能性を広げる
デジタルアートやNFTアートで稼ぐには、作品のアイデアを広げることも重要になってきます。
とくに今の時代は、デジタルに慣れている子供たちの表現力はクリエイターも参考にするほどアイデアの宝庫です。
最近の子供は、YouTube、TikTok、instagram、アニメ、映画などを見て芸術的感覚が鋭くなってきています。
なんせ、日常過ごしている環境が昔と比べてデジタルに触れることが多くなっているので、感性が自然と磨かれているんです。
あなたは、そんな子供の表現力やアイデアを押さえつけていませんか?
ゲーム機を取り上げたり、スマホを見る時間を制御したり、テレビを見る時間を決めたり。
もちろん勉強をする時間は必要ですが、時には自由に遊ばせて上げることも大切です。
実は、子どもの頃から芸術に触れるというのはても大切なことで、表現力、発想力の向上、ブランディング、お金の管理についても学ぶことができるんです。そういったことは義務教育ではなかなか教わることができません。
じゃあどこで教えてもらえばいいのかと言うと、オンライン絵画教室など、芸術に関わる人が運営している教室です。
オンライン教室で芸術に触れるメリットについては、下記の記事で詳しく話しています。
デジタルアートを制作するメリット
ちょっと脱線してしまったので、話を戻してデジタルアートを制作するメリットについて話していきましょう。
デジタルアートをつくることで、版画の制作を効率化することができる。
版画を効率よく制作できる
例えば、手描きキャンバスの版画を作る場合、ジークレーという最高品質の印刷技術を取り扱っている業者にキャンバスを発送し、キャンバスをスキャンして版画を作ることもできますが、発送する期間、印刷業者がスキャンする手間、原画を返却する手間がかかります。
その点、デジタルアートの場合は、完成させたデジタルデータを『.jpg』や『.png』形式で保存し、そのデータをジークレー印刷業社のサイトにアップロードするだけでいいんです。
発送の手間も掛からないし、印刷業側でスキャンする必要も原画を返却する必要もありません。
つまりデジタルアートは、版画を作るための作業効率が良くなって、その空いた時間を活用して好きなことをする時間をつくることができます。
ジークレー版画について詳しく書いた記事はこちら。
作品集も効率的に作成できる
作品集をつくる場合も、わざわざスキャンしたり作品を撮影してデータ化しなくても、保存したデータをサイトへアップロードすれば効率よく作品集をつくることもできます。
こうやって効率かするためには、AdobeのPhotoshopと言うソフトが必要になります。
Photoshop(フォトショップ)とは
では『Photoshop』がどのようなソフトなのか紹介していきます。
Photoshop(フォトショップ)とは、Adobe社が販売している写真を加工したり合成したりグラフィックデザイナーがデザイン制作をするときに使用する定番の画像編集ソフト。
デザイナー、写真家、イラストレーターなど、クリエイティブな仕事に関わっている人にとって、Adobe社のPhotoshopは必須のツールです。
Photoshopには『PhotoshopCC』と『Photoshop Elements』2つのバージョンがありますが、2つのPhotoshopの違いについては、下記の記事で詳しく話しています。
Photoshopでデジタルアートをつくる
デザイナー、写真家をしている人なら使ったことがあるPhotoshop。デザイン制作や写真のレタッチとはまた違った使い方になりますが、操作に慣れてくるとそこまで難しくありません。
では、僕がどのような流れでデジタルアートを制作していきたのかを解説していきます。
デジタルアート制作の主な流れ
僕がデジタルアートを制作する主な流れは、次のような感じになります。
2、撮影した写真から必要な素材をPhotoshopで切り抜く
3、背景になる写真をPhotoshopで開いて素材を配置していく
4、幻想的になるように「光と影」をつけていく
5、ひとつの世界として「色補正」や「質感」を調整して馴染ませる
6、ジークレー版画で完成させる
それでは、1つずつ解説します。
デジタルアートの素材となる写真を撮影する
僕は現在、写真家として活動をしているので、自分で風景、建物、小物、人物などを撮影しています。
もちろん肖像権の問題などもありますが、人物を使うときはモデルに許可を取ったり、風景写真を使うときは場所が特定できないように慎重に撮影をします。
僕が作るデジタルアートには2パターンあります。
撮影した写真に少しだけデザインを加えた作品。
色々な素材を合成して作る作品。
ここでは、後者の『色々な素材を合成したデジタルアート』の作り方を解説していくことにします。
撮影した写真からPhotoshopで切り抜く
撮影した写真をそのまま使うのではなく、必要な部分だけをPhotoshopで切り抜いていきます。この切り抜きの作業がとても重要な部分です。
切り抜きが荒くなると不自然な合成になってしまうので、できるだけ丁寧に切り抜いていきます。
とくに難しいのが、髪の毛の切り抜きです。ただ、最近のPhotoshopは自動で髪の毛を切り抜いてくれる機能も追加されているので以前ほど難しくはありません。
例えば、下記の画像のように背景を切り抜いて人物だけの素材をつくります。
背景になる写真をPhotoshopで開いて素材を配置していく
そして次に土台(ベース)になる背景の上に、切り抜いた素材をどんどん配置していきます。
ここではまず、ラフに配置してバランスを見ながら微調整をしていきます。
素材を配置していくと「なんか違うなぁ、、、」と思うことが出てくるので、イメージに合うように素材を少しずつずらしながら全体のバランスを整えていきます。
ある程度配置が決まったら、次は素材に「光と影」をつけていきます。
幻想的になるように「光と影」をつけていく
ある程度、素材の配置が決まったらリアリティー感を出すために「光と影」をつけていきます。
できる限り自然界の光に近い「やわらかな光」を意識すること。
ひとつの世界として「色補正」や「質感」を調整して馴染ませる
上記の写真では、まだ全体が馴染んでいないので、明るさ、コントラスト、色温度を調整していきます。
コントラストを調整することで作品の全体が馴染んで、絵画のような質感になるんです。
こうやって僕はデジタルアートを作っていきます。
ジークレー版画で完成させる
せっかく作ったデジタルアートが、印刷の工程で色が変わってしまうと台無しになってしいます。そこで、デジタルの色を再現してくれるのがジークレー印刷です。
RGBのインクで吹き付ける最高品質の印刷技術を取り入れている印刷業者へ発注して、ジークレー版画を完成させていきます。
デジタルアートの価値を上げる方法
デジタルアートの価値を上げる方法は、自分にしかつくれない世界をデジタルアートでつくり、そこに『だわり』をもつこと。
これはデジタルアート に限ったことではありませんが、絵を描く画家にとっても同じことがいえます。
たとえば、僕がつくるデジタルアートのこだわりは、「もし自分がこの世界に存在したらその世界をどう感じるだろう?」といったことを想像してもらいやすくするために、イスを素材に使うことが多いんです。
椅子をデジタルアートに使う理由は、「あなたがそこのイスに座っている姿を想像してみてください、あなたはその世界をどのように感じますか?」ということを伝えたいからです。
僕の作品に入れる説明は、抽象的な言葉で締めくくった説明が多く、こちらのデジタルアートもその1つです。
▼タイトル▼
「主の肖像画、夢想の光の中」▼作品説明▼
仕事に疲れたり苛立ちを感じたりすることはありますか?時にはイスに座って現実を離れ幻想的な世界(夢)を想像してみてください。あなたが想像する世界はあなたが望んでいる世界。その世界をつくり上げるのはあなた自身なのかもしれません。
このように、見ている人にその世界の感じ方をゆだねて、今の自分がどんな心境なのかを想像してもらうために、誰も座っていないイスをアート作品の中に入れています。
見る人によってその世界が、素晴らしい世界に見えたり、寂しい世界に見えたり、見る人の心の中の感情を見つめ直せるアート作品になってほしいという想いをこめています。
最後に
作品をどのように表現するか、どのような世界観をデジタルの中で描いていくのか、そう考えると質感の違いはあるものの、表現方法なら水彩画や水墨画と同じです。
自分の世界観を主張できる作品をどのように落とし込むかは自由です。
今の時代は手描きの絵が描けなくても、Photoshopのような画像編集ソフトを使って芸術家に進む道もあります。
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