ポートレート撮影をしていると、モデルになってくれる人の時間に合わせることもよくあります。
とくに、フリーモデルや趣味で撮影を受けてくれる人は、明るい時間帯は違う仕事をしていることが多いです。
なので、日が暮れる直前のポートレート撮影がメインになります。
夜の撮影になると、ストロボ無しではとてもじゃないけど、顔が明るく撮れないんです。
だからと言って、一眼レフについている標準のストロボだと、なぜか素人っぽくなってしまいます。
いわゆる「記念写真っぽさが出てしまう」と言うことですね。
せっかく夜にポートレート撮影をするなら、ドラマチックな写真を撮りたいものです。
そんな時に活躍するのが、「クリップオンストロボ」です。
クリップオンストロボがあれば、一眼レフから離して光を当てることもできるため、アートな写真を撮ることができます。
今回は、夜の屋外でポートレート撮影をする時に活躍する「クリップオンストロボの使い方」について話したいと思います。
これからフォトグラファーとして「アートな写真」を撮りたいと思った場合は、当記事を参考にしてみてください。
目次
クリップオンストロボとは
クリップオンストロボとは、一眼レフの上部に取り付けて使用するストロボのこと。
結婚式のスナップ写真を撮っているカメラマンが付けているストロボですね。
UnsplashのKenny Eliasonが撮影した写真
クリップオンストロボを使用するメリットは、カメラ本体から離して光を自由な角度から当てることができること。
ポートレート撮影をする場合、一眼レフの本体についている標準のストロボは使いません。
その理由は、標準のストロボだと正面からしか光を当てることができず、記念写真っぽくありきたりな写真になってしまうからです。
もちろんオーディションに使用する写真や、証明写真を目的とする場合は問題ありあません。
今回のように、ポートレートで「アートな写真」を目的とした場合は、正面からストロボを当てることはないんです。
フォトグラファーの仕事をしている人は、必ずと言っていいほど、外付けのクリップオンストロボを使っています。
僕自身もクリップオンストロボを使っていて、一眼レフに付いているストロボは使いません。
クリップオンストロボは写真家に必須のアイテム
クリップオンストロボは、スタジオ撮影や屋外でのポートレート撮影をする写真家にとって必須のアイテムになります。
よく「外付けフラッシュ」とか「スピードライト」とも呼ばれています。
クリップオンストロボは、暗い場所だけじゃなく明るい場所でも使う撮影方法もあるので、1台持っておくと写真の幅がどんどん広がります。
この後の項目でも話しますが、クリップオンストロボは、好きな角度から光を当てれるのがメリット。
たとえば、こちらの写真。
撮影協力 : Color Clips
上の写真は、僕の知人のフォトグラファーが撮影した写真です。
モデルさんの奥にクリップオンストロボを直置き(じかおき)にして撮影すると、このようなアートな写真を撮ることができます。
もう一つ紹介すると、クリップオンストロボを人物の真横から当てれば、顔半分に影をつくることができるので、クールな写真を撮ることができます。
ちなみに、上記の写真は僕がデジタルアートをつくるために撮影してもらった写真です。
そして完成したデジタルアート作品がこちら。
意識して顔半分に影を作ってもらったことで、写真に写っている人が想像している世界を表現することもできます。
このように、一眼レフから離して光を当てることができるので、光と影を自由自在に操ることができます。
クリップオンストロボのメリットとデメリット
ではここで、クリップオンストロボのメリットとデメリットについて話したいと思います。
あくまでも僕が感じたメリットとデメリットですが、参考にしてもらえると嬉しいです。
クリップオンストロボのメリット
クリップオンストロボを使うメリットについてまとめると、次のようになります。
- 一眼レフ本体に付いているストロボより明るく撮ることができる
- ストロボの発光量の調整ができる
- 自由な角度から光を当てることができる
- アートやシネマティックな写真が撮れる
一眼レフ本体に付いているストロボよりも明るく撮ることができる
一眼レフについているストロボは補助的に光を当てる役割しかなく、暗い場所では届く距離が決まってしまいます。
その点クリップオンストロボは光が強いので、ある程度離れていても明るく撮ることができます。
ストロボの発光量の調整ができる
クリップオンストロボは、発光量の調整ができるので、被写体との距離やイメージしている明るさを調整しながら撮影することができます。
あえて暗い写真にしたい場合は、発光量を弱くしてエモい写真にすることもできます。
自由な角度から光を当てることができる
クリップオンストロボは、被写体(モデル)に当たる光と影の調整が自由にできるので、光と影のメリハリがあるアートな写真を撮ることができます。
たとえば、僕がTwitterに投稿したこちらの写真です。
暮色蒼然 pic.twitter.com/THPuA9rc1Z
— シネマチック写真家 / リョウ (@digitalart_ryo) June 13, 2021
上記の写真は、知人のフォトグラファーとコラボで撮影会をした時の写真です。
撮影した場所は『奈良の平城宮跡歴史公園』。
2月の18時ごろ、夕日が沈んだ直後に撮影したものです。
この時はクリップオンストロボを三脚に取り付けて、下のように配置してモデルを撮影しました。
撮る側(写真家)から見て、前方左斜め45度の場所にクリップオンストロボの発光部分をモデルに向けて撮影。
こうすることで背景の日が暮れた空の下でも、モデルさんの顔に光が当たって写真のバランスが良くなります。
クリップオンストロボのデメリット
もちろん、クリップオンストロボを使うデメリットもあります。
- ストロボを購入する費用が掛かる
- ある程度のストロボの知識が必要
- 荷物が増える
ストロボを購入する費用が掛かる
クリップオンストロボを購入するのに、それなりに費用がかかります。
仕事をするなら「Canon」など、有名メーカーの純正品クリップオンストロボは必要になります。
純正のクリップオンストロボは、発光する安定感はありますが、どうしても高額になってしまいます。
ただ、Amazonや楽天市場で探せば、格安のストロボでも十分に使えるものもあります。
お手軽に購入できるストロボとして人気があるのが「Godox」や「NEEWER」が有名です。
ちなみに、僕が使っているクリップオンストロボは「Godox TT600」という機種。
「Godox TT600」について詳しく話している記事を、僕が運営している写真家サイトでも話しているので、ぜひそちらもご覧ください。
『GodoxのストロボTT600で魅力的な写真を撮る効果的な使い方』
ある程度のストロボの知識が必要
ある程度のクリップオンストロボの知識が必要になります。
とくに「発光量」や「照射角」の基本をおさえておけば、アートのような写真を撮ることはできるでしょう。
たとえば、下記の写真。
まずクリップオンストロボに慣れるまでは「TTL」に設定して使うことをオススメします。
『TTL』とは、周りの環境に合わせて自動で明るさを調整してくれる機能。
いきなり手動設定でクリップオンストロボを使うと難しいと感じて使わなくなってしまうので、まずは自動で発光量を決めてくれる設定で光の量と照射角の違いを試してください。
ちなみに「Godox TT600」で、光の数値と強さを比べてみると、下記の画像のような感じになります。
光の強さは「2〜128」で表されて、数字が大きい方が弱く数字が小さくなると光が強くなります。
荷物が増える
クリップオンストロボを使う場合、荷物が増えてしまうのもデメリットになります。
それほど大きなものではなく重さもないですが、ストロボと電池、予備の電池、場合によっては三脚なども持ち運ぶ必要があります。
だけど、それ以上にクリップオンストロボを持つ価値があるので、多少荷物が増える部分に関して言えば、気にならなくなってきます。
クリップオンストロボの効果的な使い方
せっかくクリップオンストロボを購入しても、一眼レフに取り付けて撮影していては、一眼レフについているストロボと同じで意味がありません。
クリップオンストロボ効果的に使うには、一眼レフから離した位置にストロボを設置して被写体に光を当てて使うのが効果的です。
そこで一眼レフから離した場所にクリップオンストロボを配置して撮影をする場合、ストロボと一眼レフをリモート接続する必要があります。
このリモート接続に必要なのが「トリガー」というものになります。
通常はクリップオンストロボと同じメーカーのトリガーを使うことで、リモート発光を安定させることができます。
僕の場合は、もともと持っていた「NEEWERのトリガー」と「GodoxのTT600」をリモート接続していますが、今のところ「発光しない」と言ったことはないので、そのまま使っています。
このトリガーをカメラの本体とクリップオンストロボに取り付けることで、ストロボと一眼レフを離して撮影することが可能になります。
クリップオンストロボの光の当て方
一眼レフから離して自由自在に光を当てることができる「クリップオンストロボ」。
一眼レフとストロボをリモートで接続する「トリガー」。
これでやっと自由度の高い写真を撮影することができます。
ちなみに、発光部分の角度を変えることもできます。
では、発光部分の角度で光がどう変わるのか、ご説明したします。
天井バウンス
結婚式の披露宴に列席したことがあるなら、気になったかもしれません。
会場のフォトグラファーは、ストロボの発光部分を天井に向けたり壁に向けたりして撮影をしていることがあります。
披露宴の場合、前撮りとは違ってスナップ写真のように、その瞬間を写真にしなければいけません。
それなのに、1回1回ストロボを一眼レフから離して別の場所に置いて撮影をしていては、一瞬の出来事を逃してしまうし、いちいち三脚を置くことができません。
披露宴の場合は、一眼レフに取り付けて撮影をするのが一般的です。
ただ冒頭でも話したように、ストロボの光を直接当てると明るすぎたり、違和感だらけの写真になってしまいます。
そんな時は、ストロボの発光部分を天井や壁に向けて光を反射させて光を柔らかくして撮影します。
このように、ストロボの光を天井や壁に反射させることを「バウンス」といいます。
天井バウンスで撮影することで、ストロボの光を柔らげて被写体に自然な光を当てることができます。
アンブレラを使った撮影
スタジオ撮影ではよく「アンブレラ」を使ってストロボの光を柔らかくして撮影しています。
アンブレラとは、クリップオンストロボの光を柔らげたりコントラストをつけたい時に使われるもの。
「アンブレラ」という名前のように、光の範囲を調整する白や銀色の傘のようなものとイメージしてください。
アンブレラについてわかりやすい動画を見つけたので、下記にシェアしますね。
僕もよく、光の魔術師イルコさんの動画を見て勉強しています。
アンブレラの種類にもいろいろありますが、透過ホワイトアンブレラでストロボの光を柔らげて使うフォトグラファーが多いです。
「アンブレラ」を使う場合に注意しておかなければいけないことは、屋外で使う場合、風の抵抗を受けやすいアンブレラは少しの風でも倒れてしまうということ。
アンブレラが倒れてしまうと、クリップオンストロボもアンブレラも壊れてしまって、撮影ができなくなってしまいます。
屋外で使用する場合は、アンブレラを取り付けたスタンドをおさえてくれる人を手配すること。
そうすれば、屋外でも安心してアンブレラを使った撮影ができます。
もしアンブレラを持ってくれる人がいない場合は、三脚が倒れないように固定するしかありません。
ですが、移動のことを考えると固定するのはオススメできません。
どうしてもクリップオンストロボを使いたいけど手伝ってくれる人がいない場合は、アンブレラを取り付けずにストロボだけをスタンドに付けて撮影します。
この場合、クリップオンストロボの光を弱く(数字を大きく)して何回か試しながらの撮影になります。
夜の屋外はアートな素材がたくさん
ストーリー性のある写真をイメージするなら、理想の撮影環境は次のような感じです。
- 晴れている日よりも曇りや雨の日
- 昼間の明るい時間よりも夕暮れの時間
とくに、夜の屋外や雨の日のはアートに感じる世界がたくさんあってチャンスです。
そんな薄暗い環境での撮影は、カメラの設定だけで被写体を明るく撮るのには限界があります。
そんな時のためにも、クリップオンストロボは持っておいた方がいいでしょう。
アクティブな動きを活かす撮り方
モデルによっては、静止的なポージングよりもアクティブに動いて表現するのが得意なモデルもいます。
例えば、こちらのTwitterに投稿した時のモデルさんです。
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YouTubeでダンス動画を公開している、モデル『進撃のまりりん』さんです。
動きがとても自然で、撮っているこっちも楽しくなります。
そんなアクティブなモデルさんに合わせて、奥から手前に広がる電線を舞台のライトのように見立てて、ローアングルから撮影した写真です。
クリップオンストロボの光は、撮影している僕の左斜め前から光量を明るくしすぎないように意識して当てています。
モデルさんが上手くストロボの位置に顔を向けてくれてたので、とても自然なポージングで違和感のない写真が撮れました。
この日は少し風が吹いていたので、透過ホワイトアンブレラを使わずに三脚にクリップオンストロボのみ付けて撮影。
ストロボの光のイメージは、照射角度を広めに設定して街灯のような光になるように調整しました。
感情を表現する撮り方
次は、こちらのアーティスト写真に使えそうな作品です。
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この時に撮影した環境は、春の雨の日の昼間、兵庫県の幅が広い河川敷に架かるレトロな橋の下で撮影した写真です。
この時のイメージは、アーティストのような写真。その為、クリップオンストロボの光量は強めで、照射角度を狭くして撮影。
通常ならNGとされる影の線をあえて入れてみました。
このような影の線は、一眼レフのシャッタースピードとクリップオンストロボの発光するタイミングがずれることで起こる影の線。
それをあえて胸から下に影の境界線をつけてメリハリをつけてみました。
このように意図せずに影の線が出てしまったら、シャッタースピードを『1/250』を基準に調整するといいでしょう。
光と影の境界線が出る原因は、ストロボの発光スピードとシャッタースピードが合っていないからなんです。
このように普通ならNGとされる写真も、目的があって撮った写真ならアートな作品になると言うのが僕は考えです。
最後に
今回は、夜の屋外でポートレート撮影をする時のクリップオンストロボの使い方についてお話ししてきましたが、いかがでしたか?
もし今よりも写真の技術を上げたいと思っているなら、クリップオンストロボを取り入れて、光の当て方にもこだわってみてください。
とくに夜の屋外での撮影は、カメラに標準装備されているストロボ(フラッシュ)を使うより、さらにアートな写真を撮ることができます。
せっかく写真家を目指すのなら、光と影を操る独自性のある写真を撮りたいと思いませんか?
ほんのり暗めだけど心が惹きつけられるストーリー性のある写真を公開中
▶︎https://www.instagram.com/ryo_creativephoto/(インスタグラム)
▶︎https://creatorofart.net/(アート×写真家リョウの紹介サイト)
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