表現の幅を広げることは、芸術家にとってすごく意味のある挑戦です。
とは言え、広げすぎるとこれまで大切にしてきた世界観が一瞬でボヤけてしまうかもしれない。
「自分が何を伝えたいのか」
「どんな景色を残したいのか」
その軸が曖昧になると、作品の重みも薄れてしまう気がして、自分自身で活動の枠を大きく変えることに慎重になっていました。
だけどここ最近、「デジタルアート」という表現が少しずつ自分の中で現実味を帯びてきました。
もちろん、以前にデジタルアートを作っていたこともあってか、心のどこかで懐かしんでいるのかもしれません。
「写真作家は撮った写真そのもで勝負をしなければいけない」
そう思い込んでいた自分を見ると「まだ狭い世界でしか活動ができていないんだな」とさえ感じます。
だけど今、確実に思うことがあります。それは、写真作家とは「撮った写真を自分らしく表現する人」なのだということです。
そう考えると、新しい世界が見えてきました。
それは、自分で撮影した写真をベースにしながらも、AIという技術の助けを借りて、まるで別の“記憶”や“夢の景色”へと再構築するような作品です。
決して手を抜いているわけではなく、今の時代に必要な技術を活用した新しいアートだと言えるではないでしょうか。
『デジタルアート』という、もうひとつのリアリティ
静かな夜に見た夢の記憶、幼い頃に見たような気がする懐かしい気持ち、まだ見たことがないどこか遠い場所の幻想。
Adobe Fireflyを使って、自分が撮った写真をベースにアートを生成してみると、そこには「現実ではないのにどこか懐かしい不思議な感覚」が僕の心にはありました。
もちろん、僕の原点は“写真”です。
だけどその写真を通して、“幻想”や“物語”を描く手段としてAIによる生成アートあっても良いと僕は思います。
ただ気がかりだったのが、これまでの活動の中にデジタルアート要素を混ぜてしまうと、世界観の統一性が崩れてしまうのではないかということ。
確かに、シネマティックな要素でもないし、雨の静けさとは違う。
そんな思いを胸に、僕は新しいギャラリーをそっと開くことにしました。
その名は『幻想生活ArtRyo』です。

例えば、写真作家として街を撮り歩いた時の写真をベースにAI生成すると、

このような作品になります。

全てAI任せではなく、どんな世界観を加えてほしいのか、どこまでベースの写真を残してほしいのかをイメージしながらAIと一緒に組み立てていきます。
このようなデジタルアートを生成するには、言葉もアートとして考えなければ思い通りの作品にならないんです。
僕は写真作家として写真で表現するのと同じように、言葉の表現も写真作家の技術。
これが、AI生成デジタルアートの本質だと思います。
世界観を守るために3つのアカウントへ
現在の僕は『幻想生活ArtRyo』を入れると、Artgeneで3つのアカウントを運営しています。
その3つのアカウントについて、簡単に紹介します。
『coaPHOTO』は、写真作家リョウとしての中核で、写真表現を軸とした活動をしています。
世界観は『シネマティックな静けさ』です。
『雨の雫』は、雨の日の静けさと癒しをテーマにした詩的な作品ギャラリー。
雨の日の静けさ、雨上がりの余韻、雨を待つ余白の3つの情景から組み立てられたアートブランドです。
『幻想生活ArtRyo』は、AIを用いた幻想的なデジタルアート作品を展開。
幻想と現実の間にある世界を再現し、現代的でありながらどこか懐かしさを感じる世界観を表現。
それぞれに共通するのは「静けさ」や「余白」、そして「記憶の断片」を感じること。
だけど、その表現方法や入り口はまったく異なります。
だからこそ、作品の種類によってアカウントを分けることで、ひとつひとつの世界観が濁らないようにしたいと考えました。
数を絞ることで世界に余白をつくる
幻想生活ArtRyoでは、当面のあいだ作品を8点のみに絞って出品する予定です。
なぜかというと、オープンエディションという形式ではありますが、数を増やすことよりも、僕自身が選び抜いた世界を届けたいからです。
「この作品は今しか出会えないかもしれない」
そんなふうに感じてもらえるような、物語のある一枚一枚を丁寧に並べていきたいと思います。
今後も、新しい作品は焦らずに、既存の作品に出会ってもらえたあとに、一点ずつ増やしていこうと思います。
急がずに育てていく。そして、静かに届ける。
そんな感覚で運営していくことが、写真作家リョウの世界観です。
現実の記憶と、夢のような風景のあわいを歩くようなアートを。
『幻想生活ArtRyo』では、そんな幻想の断片を一枚ずつ丁寧に届けていきます。
それが、写真作家として僕がいま、もう一歩先の表現に向き合うかたちです。
静かな雨音のように、心の奥にそっと残るようなアートを。
写真とAIのあいだに浮かび上がる幻想の景色を、ぜひご覧ください。

