絵描きになると、一度は個展を開いてみたくなるもの。
だからと言って、何の知識もなく「ただ個展を開きたい」という想いだけで個展を開くのは、とても危険なことである。
なぜかと言うと、何を目的で個展を開くのか明確にしなければ、まとまりがない個展になってしまって評判を落としてしまうからだ。
個展の目的を明確にさせておくことで、準備もスムーズに進めることができるし、世界観が伝わって評価も上がる。
目次
あなたが個展を開く目的は?
「個展を開くのに理由はない!ただ作品を見てもらいたいだけ!」
そのような人は行動的で素晴らしいと思うが、これから画家として芸術生活を過ごしたいのなら、個展を開く目的を考えてみてほしい。
個展を開く理由が、
- アート作品がたくさんできたから
- とにかく自分のアート作品を見てもらいたい
- アート作品を販売したい
- 個展を開いて有名になりたい
このような曖昧な考え方なら個展を開くときではない。
個展を開く目的というのは、以下のような目的になる。
「芸術に触れる魅力を感じてもらいたい」ことを目的にするなら、その魅力を感じてもらうために大きめの作品も準備する必要がある。
「地球をテーマにした個展で作品を見てもらって今の地球環境について話したい」ことを目的にするなら、地球をテーマにした作品を展示して、作品を見ながらお互いの想いを話せる時間を作る必要がある。
「日常で芸術を飾る価値をその場で味わってほしい」ことを目的にするなら、部屋に飾る場合の見本になるように、色々な部屋をイメージして作品を並べる必要がある。
このように個展の目的があれば、見にきてくれる人の役に立ってその結果、多くの人に作品を見てもらうことができる。
個展は思っている以上に費用が掛かる
個展を開くといっても、無料で個展を開けるわけではなく、思っている以上に費用が掛かるもの。
もちろん「知り合いの好意で無料で貸してくれる」という場合があるかもしれないが、ここでは一般的なレンタルギャラリーでの話を進めていくことにしよう。
主に個展に掛かる費用は以下のようなもの。
- レンタルギャラリー代
- 展示用の作品制作代
- パンフレット代
- 名刺制作費用
- チラシ代
- 芳名帳
- 手伝ってくれるスタッフへのお礼
- 筆記用具
- 個展後にお礼を出すハガキ代
- 当日のお茶代
- 交通費やパーキング代
最低でも、個展を開くにはこれだけの費用が掛かる。
僕が最初に京都で個展を開いたときは、1日だけの個展で総額で約12万掛かったが、これはとても安い方である。
レンタルギャラリーの利用条件によっては1日だけのレンタルは対応できず、最低3日からのレンタルの利用を条件にしているところが多い。
初めての人が個展を開いて失敗する理由は、
「なんとなく開いてみたかった」
と言った考えで個展を開いて、準備に掛かった費用を回収できず労力とお金だけを使ってしまうこと。
そうなると、アート作品も購入されずに辛い思いしか残らず、何のために個展を開いたのか後悔してしまう人もいる。
赤字覚悟で個展を開くのなら問題ないが、楽しく芸術活動を続けていくのなら、個展も売り上げにつながって価値を感じた方が好きな芸術を続けていける。
僕が初めて個展を開いた目的
僕が何のために個展を開いたのかと言うと、
- 知人に僕のアート活動を知ってもらいたかった
- 自分のアート作品が他人からどう見えているのかを知りたかった
- デジタルアートでの素晴らしさを感じてほしかった
- 僕のアート作品の説明を見て共感してほしかった
- クリエイティブな人たちとのつながりたかった
以上のことが、個展を開く目的だった。
当時の僕には、個展を開くための基本的な知識はなく、とにかく画家として個展を開いたという実績をつくりたかったことが強かった。
僕の場合は1日だけのレンタルでもOKのギャラリーに出会えたので、運が良かったと言えるだろう。
それでも、個展に掛かった費用は10万以上だった。
僕の場合は、
- デジタルアートと言う技法を見てもらうこと
- アート作品のモデルになりたい人を有料でその場で撮影すること
- 撮影した人をデジタルアートに合成してアートを体感してもらうこと
これが、僕が初めて個展を開く目的。
初めて個展を開いて、個展を開く目的を明確にして、その目的に合わせて準備をすることがとても大切だと言うことがわかった。
僕が開いた個展のテーマ
僕が初めて京都のギャラリーで個展を開いた時のテーマは『時間』。
毎日、一方向に刻み続ける時間。
そこに導かれた世界を、僕なりにイメージしてデジタルアートで表現したアート作品の個展、それをBehanceというサイトで公開しているので下記のサイトを見てほしい。
テーマとしては幅が広すぎるテーマではあるが、『時間』をテーマにした個展は共感されやすいものだと知った。
このように、見てもらう人に共感してもらえるテーマで個展を開くことが、個展を成功に導く鍵となる。
目的に合わて出展するアート作品を決める
初めて個展を開くことができると言う嬉しさから、これまでに完成させたアート作品を全て出展しようと考える人もいるかもしれない。
しかし、個展のテーマと関係のないアート作品を出展してしまうことで、何を伝えたい個展なのかわかりにくくしてしまう。
重要なことは、個展を見にくる人を個展会場の空間に巻き込むこと。
そうすることで、自分のアート作品の『ファン』につなげることができる。
個展を開く場合、この『テーマ決め』や『目的を明確にすること』が重要。
その次に、ギャラリーをどんな空間に装飾して、自分のの世界観に巻き込こんでいくのかを考えてみること。
できれば個展テーマに合ったアート作品を選んで、ストーリー的に作品の説明を書くと見にくる人心を引き込むことができる。
自分の理想のギャラリーを探す
個展を開くの目的やテーマが決まったら、個展を開くギャラリーを探しにいく。
このギャラリー探しのポイントは、何件か実際に見学して自分が気に入ったギャラリーを選ぶこと。
では、僕の経験からオススメするポイントをお伝えしよう。
芸術活動を応援してくれるギャラリー
Photo by GALLERY Ann
例えば、僕が初めて個展を開いたギャラリーは、京都の四条河原町から徒歩7分のところにある『GALLERY Ann(ギャラリー・アン)』というギャラリー。
コンクリート調で壁と床の色のバランスがよく、全体的に白を基調とした落ち着く空間。
そこは僕のデジタルアートの世界観をより効果的に演出してくる、大きなキャンバスにも見えた。
しかもそのギャラリーのサイトでも個展を宣伝してくれる、芸術家にとって嬉しい協力的なギャラリーではないだろうか。
そんな空間と芸術家に対して、協力的なところが個展を開く決め手となった。
駅から徒歩で行ける道路沿いがオススメ
初めて個展を開く時に知人だけを招待するのなら、隠れ家的なギャラリーでも問題はない。
しかし、少しでも多くの人に個展を見に来てもらいたいのであれば、どんな個展をしているのか道路から確認できる場所がオススメ。
初めて個展を見に来る人にとっては、個展会場に入るのはとても勇気がいるもの。
「アート作品を売りつけられないだろうか」
「興味があって見たいけど、中の様子が見えないから不安」
と言う理由から、中の様子が見えなくて帰ってしまう人も多い。
そして徒歩で見にくる人のことを考えて、駅から徒歩で行けるわかりやすい道路沿いがオススメ。
このように、見に来てくれる人のことを考えることも重要なことである。
ギャラリーが決まると、いよいよ個展までの準備をすることになる。
僕が初めて個展を開いた時は、インターネットで調べながら準備を進めていった。
いよいよ個展に向けて準備する
個展の準備をするには、いろいろと調べておく必要がある。
だけど最近ではインターネットでも『個展、開き方』などで検索すれば、参考になるブログがたくさん出てくるので、それを参考にするだけでも個展の準備を進めることができる。
【個展の準備】
- テーマに合った出展作品を選ぶ(又は新しい作品をつくる)
- 額装にするのか、『スチレンボード』にするのかを考える
- 作品を飾るレイアウトを考える
- ギャラリーでレンタルするテーブルや椅子などの物品のリストアップ
- キャプションボードをつくる(作品説明のボード)
- 手伝ってくれる人を探す
- 個展への案内状を送る
- SNSやサイトに掲載する(宣伝)
- ギャラリーの近隣に広告を置いてもらえる場所を探す
- 個展を見にきてくれた人に渡す作品カタログ
- 個展を見にきてくれた人に描いてもらう芳名帳
細かく考えていくとまだ他にもあるが、大まかな準備は上記の項目になる。
デジタル広告、いわゆるSNSで個展の宣伝投稿をすることも効果的があるが、デジタル広告だけに頼らずに、ギャラリー近隣のお店などに、個展案内カードを置いてもらうことも大切だ。
もしかしたらそれがキッカケで、次の個展会場に出会うことができたり、芸術好きな人とつながることもある。
個展の準備はとても大変だが、この準備をしっかりしておかないとギャラリーにも迷惑をかけてしまう。
『個展準備〜個展当日〜個展後のお礼』までは気を抜かないようにしよう。
個展を開くときは信頼できる人に協力してもらう
個展を開く場合、個展に協力してくれる人たちがいることで成功させることができるもの。
もちろんあなた自身が主催者となれば、あなたが指揮をとらなければいけないが、指示をするというよりお願いする立場になることを忘れないようにしなければいけない。
個展を成功に導いてくれる人とは、個展に協力してくれる以下の人たちへの感謝を忘れてはいけない。
- 受付をしてくれる人
- 接客対応をしてくれる人
- 準備を手伝ってくれる人
- ギャラリーのオーナー様
- 宣伝に協力してくれた人
2018年に京都で僕が個展を開いたときは、
- デジタルアートの素材になってくれたモデルさん
- その人物素材を撮影してくれたフォトグラファーさん
- ギャラリーで僕の作品の魅力をさらに演出してくれた音楽家さん
- 個展当日に接客や受付対応をしてくれた僕の妻
- 事前にサイトで宣伝してくれたギャラリーのオーナー様
プライバシーの関係で、協力してくれた全ての人を紹介することはできないが、一部の人たちを紹介しておくので、あなたが個展を開くときの重要なスタッフの参考にしてほしい。
作品の撮影をしてくれたフォトグラファーさん
このとき協力してくれた人、古くからお世話になっているフォトグラファー夫妻のColor Clipsさん。
僕の知人で、滋賀県を中心に結婚式や成人式の出張撮影をされているご夫妻で、明るくて純粋な写真が魅力的なフォトグラファーさん。
他にも、モデル撮影や宣材写真など、幅広い撮影を取り入れていて、滋賀を中心に、京都、大阪、兵庫、奈良など、楽しい思い出の写真を主に撮影している。
僕の個展での役割
2018年に開催した個展では、デジタルアートのモデルになりたいというお客様を、その場で撮影してもらうために協力していただいた。
その他にも、僕が別の人に作品説明をしているときに、機転を利かせてくれて僕が話終わるまで接客をしてくれて、ご夫妻がいなければ、僕は全ての人と話すことができなかっただろう。
作品を魅力的に演出する音楽クリエーターさん①
個展に出展する作品をより魅力的にしてくれる、BGMを提供してくれた2人の音楽クリエイターさんさん。
1人は写真が好きでモデルもされている、アオイミヅキさん。
数年前にFacebookで色々なひとの投稿を見ていたときに、まるで人形のように鼻が高く切れ目をした横顔の綺麗なモデルさんが僕の投稿欄に流れてきた。
当時の僕はアートも写真活動もしていなかったが、「いつかこの人を写真に撮ってみたい」と思うようになっていた。
どうにかしてつながりたいという想いが強く、FacebookでDMしたり友達申請をしたことで、なんとか繋がってもらえることができた人である。
モデルもされていて、音楽も作っている、さらに写真も撮ることがあるというアオイミズキさんにも協力してもらうことができた。
ここだけの話だが、写真活動をしていて「いつかアオイミヅキさんの写真作品を作りたい」という目標がある。
僕の個展での役割
アオイミヅキさんが作る曲は、心が穏やかになる『ゆったり』とした魅力のある曲。
僕はSound Cloudというサイトにもアップされている曲を聞いて、僕のデジタルアートの魅力をさらに上げてくれるという印象だったので、思いきって曲の使用許可をとることにした。
すると嬉しい返事をいただくことができ、僕のアート作品の魅力も伝わってとても感謝している。
個展に来てくれた人の中にも、BGMについてすごく興味を持ってくれた人がいたので、許可をもらえてよかったと思っている。
その後、さらにアオイミズキさんが新作アルバムを作るということで購入したが、心に響く唄とバックで流れる音楽がとても緩やかで心地いい。
僕のインスタグラムでも、アプバムの感想を話している。
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作品を魅力的に演出する音楽クリエーターさん②
そして個展で流す曲に協力してくれたもう1人は、作曲家として活動をしている『のつめ。』さん。
現在『のつめ。』さんは、著作権フリーの音楽サイト『DOVA-SYNDROME』にいくつかの曲を公開している。
僕が以前に映像クリエイターとして、あるイベントの映像に使用できる曲を探していたときにお気に入りにしていた曲でもある。
『のつめ。』さんの曲も幻想的で、先ほどのアオイミヅキさんの曲と同じように、ぼくの作品の魅力を上げてくれる曲だったため連絡をさせていただいた。
『のつめ。』さんにも曲の使用内容をしっかり伝えると、快く使用許可をしていただけたので感謝している。
このように音楽の面でも協力してくれた人がいたおかげで、僕がイメージしていた幻想的な空間を演出することができた。
さらに見に来てくれた人からも「アート作品とBGMのバランスが合っていて落ち着く」と言われたことがとても嬉しかった。
考えるより『行動』することは良いこと
僕は最初、「個展についてなんの知識もないまま開いていいのだろうか?」と悩んでいた。
でも、考えるより行動していくうちに個展の開き方やスケジュールの合わせ方などイメージすることができた。
個展の開く時に気をつけること
個展を開く場合、協力してくれる人がストレスなく動けるようにすることが大切だ。
主催する側は、準備やそれぞれの役割をお願いするはとても大変だが、それ以上に協力してくれる人へのサポートは重要なこと。
トラブルに巻き込むことなく、個展を成功に導くことで信頼関係もより深くなっていく。
最後に、個展を成功に導いたもの
個展を成功に導いてくれたのは、作品をより効果的に見せてくれるように応援してくれたギャラリーと、作品と空間の演出を手伝ってくれた音楽クリエーターさん。
そして、個展を見にきてくれる人を作品の中のモデルとして入れて、その人にデジタルアートを体感してもらうと言うアイデアを出してくれたフォトグラファーさん。
全ては、行動に移したことで夢が叶いそこに価値と信頼が生まれ、魅力のある個展へとつながった。
理想的な生活には、共感してくれる仲間と共にアイデアを出し合うことが必要。
同じ想いをもったクリエーターとアイデアを出し合い、価値と信頼をつくっていくことで、お互いが理想にしている芸術生活を目指していくことができるということである。
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