作品アイデアが浮かばず、制作が止まってしまう瞬間は誰にでもあります。
でもそれは、才能やセンスが足りないからではありません。
多くの場合、考えすぎてしまっているだけです。
この記事では、現役デジタル作家が制作を続ける中で感じた、思考をシンプルに戻すことでアイデアが動き出す感覚について語っています。
「何を作ればいいか分からない」と感じたとき、考え方を整える方法について紹介します。
目次
物事を複雑に考えてしまうと、どうなる?

物事を複雑に考えてしまうと、頭の中で新しい情報を入れるスペースがなくなって焦ってしまう。
最近の言葉でいうと「テンパる」というもの。
とくに、フリーで仕事をしていると「信頼されたい」という想いが強くなって、「どんな無茶な案件でも受けなければいけない」と思ってしまいます。
それは良いことですが、何でもかんでも受けてしまうと1つの仕事に集中できず、全ての仕事が中途半端になって、質の低い仕事しかできなくなってしまいます。
そのように、質の低い仕事ばかりしていては信頼をなくしてしまうのも当然です。
質の高い仕事をするには、自分にとって必要で価値のあると思える仕事をすること。
と言っても、なかなか伝わりにくいと思うので、イメージしてもらいやすく下記のような図を作ってみました。
【なんでも受ける人と価値のある仕事だけを受ける人の違い】

上の図の左側は、なんでも受けてしまう人のイメージで「あれもこれもやらなければいけない」と焦って、集中力がバラけてしまっている状態。
右側は、1つのことに集中している人のイメージで「ゆとり」をもって仕事に取り組むことができている状態です。
どちらがストレスを抱えるか想像はできると思います。
物事を複雑に考えてしまう人の方が、なんでも引き受ける傾向にあるようです。
物事を複雑に考えてしまうと、自分にとって一番重要なモノが見えなくなってしまうので、いつも焦っている印象があります。
では、シンプルに考えたことで質の高い仕事につながった話を一つ紹介しましょう。
よりシンプルにして質を上げる
これは実際に「シンプルに考えたことで商品の質が上がった」という有名な話です。
世の中の大半のものは『ノイズ』である
電気機器メーカーのブラウン社でデザイン部門のトップをつとめていた、商業デザイン界のカリスマ『ディーター・ラムス』がいった言葉。
世の中の大半のものは『ノイズ』であり、本質的なものはほとんどない。
この言葉には、次のようなストーリーがあります。
ディーター・ラムスが作ったレコードプレイヤーは無駄な装飾を全て排除した、とてもシンプルなデザインでした。
この時代のレコードプレーヤーと言えば、頑丈な木で覆われたレコードプレーヤーが多かったのですが、ディーター・ラムスが作ったレコードプレイヤーは、必要のない装飾を全てなくして透明のプラスチックカバーを付けたシンプルなデザインのレコードプレーヤーでした。
当時は「そんなシンプルなレコードプレーヤーは売れないだろう」と思われていましたが、そのシンプルなデザインが世界中で話題となって人気を集めました。
そんなディーター・ラムスは自分のデザインに対して「より少ないもので、より質を良くする」と言って、音楽好きにとって価値のあるレコードプレーヤーを作りました。
これが、シンプルに考えたことで商品の質が上がったと言う話です。
物事を複雑に考えてしまうと、なくてもいいものや余分なものをつけてしまい、その結果、余分な仕事が増えて効率を悪くしてしまいます。
シンプルに考えることは難しいのですが、質の高い仕事をする上でとても重要な意識のもち方なんですね。
物事を複雑に考えてしまう癖は治る?
では「物事を複雑に考えてしまう癖」は治すことができるのでしょうか。
結論から言うと「物事を複雑に考えてしまう癖はその人の性格」です。
とは言っても、物事を複雑に考えてしまう癖は治すことができるので、この後も安心して読みつづけてください。
物事を複雑に考えてしまう癖を治すには、「こだわり」をもつことです。
例えば、仕事の場合で考えてみましょう。
仕事にこだわりをもつことで、そこに仕事を受けるための判断基準ができるため、重要な仕事だけに集中することができます。
僕の失敗談
ではここで、僕の経験談を参考に話をしましょう。
僕は過去に、グラフィックデザイナーの仕事をしていました。
今でも常連さんからの依頼を受けることはありますが、新規のデザイン制作の依頼は、ほとんど受けないようにしています。
その理由は、写真作家の活動に集中するためです。
優しさが自分を追い込んでしまう
過去にフリーでグラフィックデザイナーをしていた僕は、デザインの依頼を受けるために必死で、できる限りクライアント様の要望に応えようと、どんな無理難題な要求も対応していました。
例えば、通常では考えられないくらい格安価格でデザイン制作の依頼を受けたり、48時間以内にフライヤーのデザインデータの納品の対応をしたり。
だけど、デザイン制作の時間と費用のバランスが合わず、家賃の支払いができないほど生活が追い込まれたことがありました。
それでも「いつかデザインの依頼が増えるだろう」と信じ、格安無茶振り案件を受けてました。
その結果、それが自分を追い込んでしまったんです。
無理難題な要望は自分のためにならない
これまでに僕がクライアント様から受けた無理難題な要望を挙げると、次のようなものがあります。
A2サイズのポスターデザインを2,000円(印刷費用込み、校正回数の制限なし)で、48時間以内に納品してほしい。
Web制作(全6ページ分)を30,000円(校正回数の制限なし)でお願いしたい。
2年前に支払った初期費用の範囲でサイトをリニューアルしてほしい。
通常ならあり得ない内容の案件です。だけど僕は、そのような要望も迷わずに受けていました。今思うと、デザイン業界からクレームがきてもおかしくない案件です。
なのに、なぜそのような格安無茶振り案件を受けていたのかと言うと、クライアント様から次のような甘い言葉を真面目に受けとっていたからです。
周りに宣伝するし、売上げが上がったらどんどん依頼するよ。
結果的に、いくら待ってもその後の依頼につながることはありませんでした。
当時の僕はクライアント様との信頼関係を崩さないように「どんな無理難題な要望でも受けなければいけない」と思い込んでいたんです。
フリーランスになると、全て自分で決めることができるため「知人だから破格で」とか「予算が出せないなら安くしてあげよう」と、こだわりを捨てて相手のことを優先してしまいます。
物事を複雑に考えている人は「相手が喜んでくれるならある程度の無理難題な内容でも受けよう」と、どんなことでも引き受けてしまって、それが自分を追い込んでしまいます。
まさに、先ほど紹介した図のようなイメージです。

そう言った無茶振り案件ばかりを対応していたことで仕事が中途半端になり、親しくしていたクライアント様と疎遠になってしまいました。
もしあの時「この要望は今の自分にとって必要なことなのだろうか?」「クライアント様は本当に自分のことを宣伝してくれるだろうか?」と思ってこだわりをもっておけば、もっと良い方法が浮かんでいたかもしれません。
心にゆとりがなくなると、そう言った判断ができなくなってしまうのです。
決断疲れの世の中
今の世の中の人たちは、自分自身で多くの選択肢をつくってしまいます。
その選択肢の多さで、自分にとって何が重要で何を捨てればいいのかを見極めることができなくなっているんです。これを心理学用語で「決断疲れ」と呼ばれています。
この決断疲れは、他人からの提案を全て受け入れてしまったり「何でもできる自分はクリエイティブだ」という欲張りから生まれてしまいます。
これまでの僕の経験から言うと、「あなたのために」と言葉をかけてくる人は、たいがい「この人は私にとって都合のいい人」と思っていることが多いものです。
本当に自分のために考えてくれているなら、親しい仲でも「正規の仕事として受けてほしい」と言ってくれます。
仕事の質を上げるシンプルな考え方
仕事の質を上げるには、物事をシンプルに考えること。
質の高い仕事をする人は「選択する」ことに時間をかけて、自分にとって重要なことだけを受ける人が多いのです。
再度、デザイナー時代の話に戻りますが、さっき「どんな無理難題な要望も対応してきた」と話しましたが、それは「何でも対応してくれる優しい人」と思われたかったのかもしれません。
もしあの時、「こだわり」についてしっかり話しておけば、重要な物事を見極めることができたはず。
というように、物事をシンプルに考えると簡単なことなのかもしれません。
実はこの“物事をシンプルに考える”というのは、僕が提案している「幻想生活」というアートライフスタイルの土台にもなっています。
興味がある方は、下記のページをご覧ください。
より少なくより質の高い仕事をする
シンプルに「より少なくより質の高い仕事をする」ことを意識していれば、もっと心にゆとりを持つことができたでしょう。
「選択する」ことに時間をかけている人は、自分にとって重要なことだけを受けて集中するため、質の高い仕事につなげることができています。
「より少なく、より質の高い生活を過ごす」
そう考えるには、1日24時間をいかに効率よく過ごすかを考えると、日常生活もだんだん楽しくなってきます。
仕事の質が下がるとその業界の価値も下がってしまう
仕事の質が下がってしまうと、その仕事に関わる業界の価値を下げてしまうことにもなりかねません。
例えば、僕はどんなデザイン制作でも破格で引き受けていましたのですが、SNSやサイトをみてそれを知ったデザイン会社から注意を受けたことがあります。
当時は『ココナラ』や『クラウドワークス』のような、クラウドソーシングサイトに登録して依頼を受けていました。
クラウドソーシングサイトには、どんな依頼をいくらで受けているのかが公開されているため、同じデザイン業をしている人から費用の参考にされることもあるんです。
そんな中、
このデザイン制作をこの安さで受けられるとデザイン業界の価値が下がるからやめてほしい!
と、同業者からクレームが届いたことがあります。
その日以来、どんな仕事をするときも「こだわり」をもつことにしました。
僕の「こだわり」は、次のようなもの。
- いくらお世話になっている人でも設定した価格より下回った場合は受けない。
- どんなに「急ぎ」と言われても依頼を受けた順番に仕事をする。
- デザインの修正回数を設定し、それを超えるとプラス料金をいただく。
- 支払い方法や支払いのタイミングを決めている。
すると不思議なことに、こだわりをもったクライアント様との繋がりができて信頼関係が生まれ、今でも定期的に依頼をしてくれます。
これこそが本当の「信頼関係」と言うものではないでしょうか。
物事はシンプルに考えた方が伝わりやすくなる

物事をシンプルに考えると、相手に想いが伝わりやすくなります。
再びデザイナー時代の話になりますが、クライアント様から次のような指摘を受けたことがあります。
この複数のデザイン案から選ぶのは難しい。できれば1つの案だけを出してほしい。
どう言うことかというと、毎回1つの案件に対して5つのデザイン案を出していました。
自分の勝手な解釈で「複数のパターンがあった方が選ぶ楽しさを味わってもらえるだろう」と思っていました。
だけど、それが逆効果だったんです。
クライアント様にしてみれば「選ばなければいけない」というストレスを抱えてしまします。
忙しくて時間がないのに「選択する」という作業が増えるし、「迷う」というストレスを抱えてしまいます。
そんなことでは「このデザイナーは時間がかかって信頼できない」となるのも当然でしょう。
信頼されなくなると、その原因を探すためにどんどん物事を複雑に考えてしまうもの。
そしてさらに焦って失敗、また複雑に考えてしまって、また大きな失敗をする。
これが『負のスパイラル』です。
負のスパイラル

物事を複雑に考えてしまう人は、『負のスパイラル』に陥りやすいのも特徴の一つ。
この『負のスパイラル』というものはとてもやっかいなものですが、抜け出す方法があります。
負のスパイラルから抜け出す方法
負のスパイラルから抜け出す方法は、客観的に今の自分の状況を見て分析すること。
これを「自己分析」と言います。
よく就職をするときに使われる言葉ですが、負のスパイラルに陥ってしまった時にも使えるので、覚えておくといいでしょう。
「自己分析」とは、今の自分の状況を客観的に見て改善すること。
まず「負のスパイラル」に陥りやすい人は、頭の中で失敗ばかりを連想してしまいます。
「あれをすれば相手にとって負担になるから、失敗につながるかもしれない」
「先にこっちの案件をしたら作業に時間がかかって納品が遅れるかもしれない」
これは自己分析ではなく、ただ慎重になっているだけです。つまり、行動してみないと何も始まらない。
ではどうやって「自己分析」をすればいいのかと言うと、次のような流れをイメージするといいでしょう。
↓
最悪な状況をイメージする
↓
そうならないためのアイデアをいくつか考える
↓
その中から最善の方法を見つける
↓
実際に行動に移す
この方法は、僕が行き詰まった時や失敗した時に「自己分析」する方法ですが、これが意外とスムーズに改善できる方法なんです。
失敗を恐れて慎重になってないか?

物事を複雑に考えてしまう人は、1つの物事に対していろいろな角度から失敗を連想してしまうものです。
失敗を恐れて慎重になりすぎて「この方法だと失敗するかもしれない」と考えて、そこからなかなか先に進むことができなくなってしまいます。
失敗をするから成功につながるのに、それに気づくことができないまま、また同じ失敗を繰り返してしまいます。
行き詰まったら気分転換しよう
もしあなたが今「負のスパイラルに陥っている」と感じたら、少し気分を変えてみてください。
例えば、芸術に触れることでも気分転換になります。
芸術に触れることで『ストレス軽減・心の疲れを取り除く・集中力を上げる』効果があります。
もちろん、芸術を見る側でも作る側でもどちらでもその効果は得られますが、作る方が心の中の想いを放出することができるので、より効果があります。
うまく絵を描こうとしなくてもいいんです。変な形のものを作るだけでもいいんです。
自分自身が発散できるのであれば、その作品があなたらしく、独創的で唯一無二の作品になります。
芸術に触れる価値は、そこにあります。
芸術を見て気分転換になる理由
芸術作品を見ていると、色使いが綺麗だったり、幻想的で非現実的な世界だったり、光と影のバランスが良かったり、心が揺さぶられて疲れが和らぐのを感じることができるはずです。
心の疲れが和らぐと、心にゆとりが生まれて物事をシンプルに考えれるようになります。
では、芸術作品に触れるにはどう言ったものがあるのでしょうか。
芸術に触れるには、次のような方法があります。
- 作品展を見に行く
- 作品を購入する
- 作品をレンタルする
では簡単に説明しよう。
作品展を見に行く
作品展を見に行くのが一番の気分転換になるでしょう。
その理由は、外へ出て会場に着くまで新鮮な空気を吸えるし、人と触れ合えるし「歩く」ことで健康にも良い。
しかも、作品を見ると刺激になるので気分転換になります。

それに、最近では非現実的な作品を体感することができる「トリックアート施設」もありますが、それについては、下記の記事で紹介しています。
部屋に作品を飾る
仕事が忙しいという場合は、気に入った作品を購入して自宅に飾っておくことで、身近な場所で芸術に触れることができます。
とくにリビングにアート作品を飾ると、休憩する時にその作品を眺めることができてオシャレな部屋になります。

最近話題となっているのが、額装とセットで作品を購入できるオンライン作品購入サービスです。
作品と額縁を別々で購入する手間もかからないし、作品に合う額縁を同じサイトで注文できるのは嬉しいサービスと言えるでしょう。
芸術を作ると気分転換になる理由
芸術作品を作ると、作品制作に集中することができるし、今の自分の心の中の思いを作品で表現することでストレスを外に吐き出す効果があります。
絵を描いてもいいし、写真を撮るのでもいい。
僕は定期的に雨の日に撮り歩くことがありますが、雨の中を歩いていると、その静かな余韻が心に余白を作ってくれるんです。

最後に、行動しなければ前に進まない
何をやっても上手くいかないことは必ずあります。
そんな時ほど『とにかく行動する』のです。
完璧を求めなくてもいい。とにかく最初の1歩を踏み出すことが大切で、その1歩は必ず未来につながります。
実際に僕も慎重になりすぎて行動できなかった時期がありました。
あの時、もし行動をしていたら、もっと早くアートの仕事に繋げることができたでしょう。
行動すれば夢は叶うもの。
難しく考えなくていいんです。
無謀でもやりたいことをやり続ければ、それが仕事につながります。
今僕がやっている創作活動は、たまには「静かな時間を過ごすことも大切だ」ということを教えてくれました。
そこで生まれたのが『幻想生活アート』です。

