アート制作活動をしていて少しでも多くの人に作品を見てもらうために、個展を開くことも考えるだろう。
だけど、いざ個展を開くと予想していたより人が訪れなかったり、作品が購入されないと落ち込んでしまうことはよくあること。
「自分は画家に向いてないのかもしれない」と悩んでしまうと、アート制作活動のモチベーションが下がってしまう。
そんな時は、一旦、アート制作活動を休んで次のようなことを考えてみてほしい。
「今の自分は芸術家としての認知度はどれくらいあるのだろう?」
芸術家を目指す人がよく勘違いをすることが「個展を開けば認知度が上がる」と思い込んでしまうこと。
「毎日SNSで作品を公開しているし、フォロワーも増えてきてるから、それなりに認知度はあるだろう」
そう錯覚してしまうのもわかる。だからと言って「フォロワー=認知度」ではない。
僕の考えは「信頼と交流=認知度」だと思っている。
そういった「信頼と交流」を増やすために必要な知識が「セルフブランディング」である。
目次
はじめに
今回の記事では、信頼してくれる人(ファン)をつくる方法について話している。
信頼してくれる人(ファン)を増やすには、自分のアートに対する想いを伝えたり、これまでの経験を語ることも必要だ。
成功した話だけではなく、時には失敗談を話すことも重要で、そこに共感してくれるから興味をもってもらうことができる。
当記事は、これから芸術家を目指そうと考えているあなたのために、アート×写真家を目指した僕の経験したことを元に書いた記事である。
「共感」してもらうための発信の仕方
興味をもってもらうためには「共感」してもらえる発信の仕方が必要である。
共感してもらうためには、作品に対する想いやその作品がどういった経緯でつくれたものなのかを発信し続けること。
どんなに優れた作品をつくったとしても、その作品に興味をもってもらわなければ作品の魅力は伝わらない。
SNSでよく見かける投稿が「新作を描きました」の一言コメントと作品の画像。
例えば、その作家のことを知らない人は、「新作を描きました」投稿を見て興味をもってくれるだろうか?
その作品がどんな想いでどのような経緯でつくられたものなのか、作品の見えない裏のストーリーも知りくなるはず。
アート作品のストーリーを伝える
認知度がない間は、アート作品に対する想いや作品制作の裏にあるストーリーを伝えるなどして、認知度を高める工夫をしなければいけない。
例えば、僕が制作したこちらのデジタルアートを参考に話していこう。
このデジタルアートのストーリーを伝えるなら、次のような感じになる。
この作品は僕がデジタル画家として活動をしていたときに制作したデジタルアート。この作品をつくったことがキッカケで、今の「アート作家×写真家」の活動を進めることができた。
当時の僕はアート活動をするための知識はなく、ただ、グラフィックデザイナーで身につけたPhotoshopを使ってアート作品をつくりたいと思っていた。
こうしてデジタルアート制作活動を2年間続けていたが、作品の購入に繋がることはなく、認知度を上げることができなかった。新作が完成するたびに、複数のSNSで「新作つくりました」と投稿するも反応がない。
そんな時、ある芸術家と出会い、芸術活動についての知識を学ぶことができた。
芸術活動に必要な知識を学んだことで、僕に足りないことや間違っていたこと。それに気づき、自分が理想としている芸術生活までプランを明確にすることができた。
先ほど見てもらったデジタルアートは、芸術家に出会って僕が自分の間違いに気づいたときにつくったデジタルアート作品。
未来の自分の理想である「芸術で地球を塗り替えたい」と言う想いを表現した作品だ。
この作品のような幻想的な世界をつくることはできないが、「芸術」と言うジャンルでこの地球の本当の素晴らしさを見つけてほしいと言う想いを込めている。
中央にある椅子は、今この作品を見ているあなた自身が座って、「あなたが想像する素晴らしい未来の地球」を感じてほいしという意味で描いている。
デジタルアート作家リョウより
作品のストーリーが少し長くなってしまったが、このように、作品をつくった時の裏の背景を伝えると、その作品をつくったときの僕の心境がイメージできて共感されやすくなる。
成功した話だけではなく、悩んでいたことや失敗したことを踏まえて語るのがポイントだ。
失敗したことはカッコ悪いことではなく、失敗は人間らしい部分になるので、そういったことも発信することが大切だ。
個展に人がこない原因はブランディング不足
個展を開いても人がこない原因には色々あるが、とくに思い浮かぶのが次のようなもの。
- 個展会場場所がわかりにくい
- 人通りの少ない場所で入りづらい
- そもそも個展があることを知らない
- 個展の様子が見えないから入りにくい
- 何のイベントなのかわからない
そもそもSNSなどを使って、普段どのような活動をしている画家なのか、作品が描かれた背景が見えなければ、画家や個展の存在なんて知ってもらうことはできない。
セルフブランディングは、日頃どのような活動をしていてなぜその絵を描いたのかを知ってもらい、自分に興味をもってもらうための入り口なのである。
セルフブランディングが重要な理由
セルフブランディングが重要な理由は、自分がどんな人物なのかを知ってもらい「共感」や「信頼」してもらうため。
「ブランディング」の意味を調べてみると、次のようになっている。
あるブランド(今回の場合は画家)に対して共感や信頼ができ、そのブランド(自分)がユーザー(お客様)にとって価値と感じるもの。
ということを踏まえて、個展に来てもらうまでの流れを逆算していくと、次のようになる。
↓
③ファンになってもらうために「共感」できるポイントを発信する。
↓
②「ファン」になってくれた人に個展の告知をする。
↓
①個展を見にきてくれる。
つまり『④興味をもつ→③共感する→②ファンになる→①個展に行く』というのが自然な流れになる。
だからいくら優れた絵を描いていても、どんな画家なのかも知らない人から突然「個展を見に来てください」という告知投稿が流れてきてもスルーしてしまう。
普段からSNSで画家の活動の様子や絵が生まれたストーリーを発信していると、そこに共感することができて自分の絵に興味をもってくれる。
絵を見るのが好きな人はインパクトのある絵よりも、描いた絵の背景にあるストーリーに興味をもち、そこに共感できたときに、初めてその絵に価値を感じるのである。
セルフブランディングはストーリーを伝えること
セルフブランディングをする場合によく勘違いされているのが、「自分はこんな人物です」と自分のことばかりをアピールすると思っていること。
正しいセルフブランディングとは、自分がなぜ画家になったのか、その絵を描こう思った想い、その作品が誕生したストーリーなどを伝えること。
それをSNSやブログで発信し続ければ、その絵にも興味をもってくれて画家と直接話したいと思う気持ちから個展を見に来てくれるのである。
ブランドイメージを作る
ブランドと聞くと、高いもの、高級感があるものと思ってしまうかもしれないが、それだけではない。
たとえば、みんなから愛されている『ルマンド』というチョコレートビスケットを参考に考えてみよう。
ブランドイメージ 『ルマンド』編
僕も好きなブルボンの『ルマンド』は、100円前後で紫色したパッケージの印象があるチョコレートビスケット。
日本で『ルマンド』と聞いて、紫色のパッケージした美味しいチョコレートビスケットを思い浮かべる人は多いだろう。
ルマンドは、1974年に誕生して2019年には45周年を迎えた大ヒットロングセラーの商品。
実は、当時の開発者が新製品のアイデアを考えていた時、なかなかアイデアが浮かばずに紙をくしゃくしゃに丸めて捨てた時、その捨てた紙が独特な形をしていたことから誕生したのが、今の『ルマンド』になったと言われている。
ルマンドという言葉はフランス語が由来となった造語で、本来のフランス語は「ル・モンド」と言って「世界」を意味する言葉だった。
だけど、ルマンドの開発者の「世界に広がるお菓子になってほしい」という想いから、「ルマンド」という親しみやすい造語になった。
昔から形を変えず、美味しくて子供から大人まで好かれているチョコレートビスケットの『ルマンド』も、立派なブランドになっている。
こうやってみんなから「ブルボンの紫色のパッケージで美味しいチョコレートビスケットと言えばルマンド」と言うブランドを成功させた。
これが、ブランディングの成功例である。
ブランディングで画家の価値を高める方法
では、画家はどうやってブランディングすれば良いのか。
それは「奇抜なファッションをした画家は〇〇」とか「料理の上手な画家と言えば〇〇だ」のように、キャラをつくること。
自分の得意なものや好きなものを取り入れて、他の人には作れないキャラをつくり、そこに興味をもってくれる人を増やすこと。
つまり、印象に残る自分のキャラをつくり興味を持ってもらうこと。
これが正しいセルフブランディングである。
セルフブランディングが上手くできれば、画家としての価値を高めることができてファン化することができる。
ファンになってもらうことができれば、そのファンと直接交流するために個展へと招待すればいい。
こうして自然な流れで個展へとつなげていけるので、相手にストレスを与える売り込みをしなくてすむ。
個展で集客するのではなく、集客してから個展を開く
個展を開いて大勢のお客さんを呼べている画家は、普段から画家になるまでの人生や絵に対する想いなどをメディアを通して発信している人が多い。
ある程度のファンがいるから、個展を開いても見にきてくれるのである。
決して、あせって下記のようにならないようにしてほしい。
×【個展→集客→ファン化】
正しくセルフブランディングをすれば、下記の流れで自然に個展に招待することができる。
○【興味づけ→共感づくり→ファン化→個展で交流】
とくにTwitterを使ってセルフブランディングをする方法が、拡散されやすく興味をもってもらいやすい。
最近では、Instagramでもブランディングをする企業や個人が増えている。
Instagramは、ストーリーズとフィードをうまく組み合わせて使うことで、フォロワーを増やすことができる。
ファン化できていない時に、あせってSNSで売り込みをしてしまうとどうなってしまうか、次の項目で僕の実体験を話しておこう。
SNSの売り込みで失敗した話
僕も以前まで集客する方法は、先に個展を開くことだと思っていた。
個展を続ければいつか話題になって自分の絵が高く評価され、画家としての知名度も上がっていくものだと思っていた。
そのため新作が完成するたびに、SNSで作品の画像を公開して売り込み投稿をして「そのうち誰かに購入されるだろう」と軽く考えていた。
しかし、それが大きな間違いだった。
集客どころか、画家としての興味を持ってもらえず、絵の価値も上がらないままSNSに投稿する手間だけが増えていく。
SNSの利用目的を考える
現在では、若い世代を目線になって世の中の流れを知るために、Google検索からSNS検索に移行する企業や個人が増えてきている。
必要なことだけを知るためにワード検索をして、自分のためになる情報を見つけて解決する。
SNSを使う人は同じ趣味仲間の投稿を見てアイデアを浮かばせたり、仕事についてのヒントを探している。
そんな時に売り込み感がある投稿が流れてきたら、フォロワーにとってはストレスでしかない。
そんな売り込みをSNSで続けると、絵の価値も下がるしフォロー解除の対象にもなってしまうだろう。
だからといって、SNSで絵や画家活動についての投稿が危険だと言っているわけではない。SNSも正しく使えば、集客するためにとても効果的なツールである。
では、SNSで何を投稿していけばいいのかと言うと、さっき話した、
- 絵に対する想い
- 画家になった理由
- 芸術活動の様子
- 日常のライフスタイル
などを発信すればいい。
SNSでの売り込み投稿は、フォロワーにとってはストレスになってしまうので、できるだけしない方がいい。
2020.06.14
失敗する絵の売り込み方 | 画家を目指している人がSNSで間違えてやってしまう投稿
SNSで間違えた売り込み投稿をしていませんか?毎日SNSでアート作品の投稿をしているのに全然効果がない。そんな悩みを解決するにはSNSで売り...
『ファン』になる流れをイメージしよう
画家のファンになる人は、まずどんなことを考えるかイメージしてみること。
「この素晴らしい絵を描いている人は、どんな画家?」
と興味を持ち、興味を持った人は次に、
- 画家のプロフィール
- 画家の活動状況が見れるブログやSNS
- アート作品が見れるポートフォリオサイト
など見る。
そこで改めて「この画家の人生や芸術活動に共感できる」となって、SNSをフォローしたりサイトをお気に入り登録する。
こうやって、画家についての情報を知ろうとする。そう考えると、画家の人生に共感できるからファンになると言うことになる。
こうしてファンになる仕組みを上手くつくることが、集客に繋げる効果的な方法である。
自身の人生をストーリー調で発信する
自分が描いた絵を好きになってくれる人は、画家の人生そのものにも興味をもってくれる。
- 画家の子供の頃の話
- 自分の人生の中で印象に残っている話
- 悪い状況にあった話
- お金がなく貧乏生活をしていた話
- すごく幸せを感じた話
- 画家になった理由
- なぜその絵を描こうと思ったのか
などのような話について、ブログやSNSで公開している画家には共感したくなる。
どんな有名な画家でも、普通の人と変わらない人生を経験しているはずだ。
貧しい日々を過ごした経験があり、そこから世界的に有名な画家になったと言う飛躍的なストーリーを持っている画家もいるだろう。
こうのように画家のファンになる人は、画家の人物像がわかるストーリーを見て、共感できると感じた時にファンになる。
これまでの自身の人生を語る方法も、個展の集客につなげるために必要な知識なのである。
ただし経験してもいないストーリー、つまり嘘のストーリーを発信することはNGである。
あくまでも、自分が生まれてから画家になるまでに、自分が経験して印象に残っているストーリーを面白く発信していくこと。
時にはネガティブなストーリーも発信してみると、より興味をもってもらいやすくなる。
この理想的芸術生活ブログで書いた、『僕のマイストーリー』の記事を参考にしてもらっても良い。
2022.08.04
プロフィール | ブログを発信しているアートマネージャーリョウの紹介
理想の芸術生活を目指し始めた物語。京都府宇治市で活動するアート作家×写真家リョウが目指し始めた芸術人生物語。グラフィックデザイナーからアート...
もし、ストーリーが思い浮かばない場合は、なぜ自分が画家を目指すようになったのかをメモに書き出してみよう。
そうすれば、ファンにつなげるためのヒントになるストーリーが浮かんでくる。
個展は作品購入より交流目的
どんなに表現力があり優れた作品をつくっている画家であっても、ブランディングが上手にできていなければ個展やアート作品の購入に繋げることはできない。
個展に行きたくなる人の心理は、共感できる画家に直接会って話が聞ける場所であり、その会話の中で展示されている作品についても聞きたいもの。
そう、作品を見てもらうために個展を開くのではなく、見に来てくれる人と交流できる場所として個展を開くと言うことが目的である。
そのために普段から、芸術活動をしていく上でSNSなどでブランディングをして『自分』の価値を高めておくことが必要になってくる。
個展に来てもらう流れのイメージは以下のような感じになる。
この流れを仕組み化することで、個展に見にきてくれる人を増やすことができるだろう。
使うSNSによって効果的な発信の仕方もあるが、まずは自身の活動の様子や作品に対する想いを発信し続けることが大切だと言うことを、僕は経験から知ることができた。
ブランディングをして得られたもの
僕はこれまで、アート×写真家になるまでの人生を発信し続けていたことで、その生き方や芸術への想いに共感してくれる人がどんどん増えてきた。
それは一般の人だけではなく、芸術家・写真家・モデル・音楽家・クリエイターなど、すべて個人で活動をしている人たちだけど、その繋がりで自分の活動を広げることができている。
ブランディングをするにはそれなりの知識が必要になるが、これからの時代はこのブランディングがとても重要な知識になる。
最後に
今回の記事で個展を開いても人が来ない理由は、個展を開くまでのブランディングができていないことが原因だと話してきた。
焦っている人ほどSNSで間違った売り込みをしてしまっていると言うことを、僕自身が経験したから言えることであり、ブランデイングがどれだけ重要なものなのか知ることができた。
個展を開く前にもう一度、個展に来てくれるまでの流れをイメージして見てほしい。
焦って個展を開く必要はなく、自身にファンを増やしてそのファンと直接交流できる個展にした方が、作品を広げるキッカケにもなるだろう。
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