こんにちは、京都の写真家リョウです。
写真家として自分の写真をアピールすることはとても大切なことで、企業はその写真を見て仕事の依頼をするのかを検討します。
そこで、写真家の中でよく議論されていることが『作品撮り』と『ポートレート撮影』の違いです。
今回は、『作品撮り』と『ポートレート撮影』の違いを明確にして、効果的に自身が撮影した写真をアピールする方法をお話ししましょう。
目次
はじめに
SNSでよく見るモデル募集の内容に『作品撮り』という言葉を使う人が多いですが、実は『作品撮り』という言葉は曖昧な表現として思われています。
僕自身は『作品撮り』という言葉を理解して使っていますが、人によって認識の違いがあるため、記事を書くことにしました。
本記事で話している『作品撮り』については、あくまでも僕の考えであって、写真業界全般的な内容とは異なる場合があることをご理解ください。
では、作品撮りとポートレートの違いについて話していきましょう。
作品撮りとポートレート撮影の違い
まず僕が思っている『作品撮り』とは、コンテストに応募する写真、企業にアピールするためのポートフォリオサイトで公開する写真、個展に出展する写真のことです。
ただし、先ほども言ったように『作品撮り』は曖昧な部分があるので、自分自身で区別することでその目的を明確にしておくことが大事なので、僕の場合は、自分らしい写真をアピールするために撮るものを『作品撮り』と言っています。
一方、『ポートレート撮影』は、人物を被写体とした写真で、モデル写真、宣材写真、プロフィール写真など一般写真撮影を含めて撮影するものと僕は使い分けています。
ではもう少し詳しく見ていきましょう。
『作品撮り』について
作品撮りは、あるテーマを決めてそのテーマに合うモデルの手配、衣装の準備、ヘアーメイク、ロケ地などを決めて、自分の世界観を表現した写真を撮ってポートフォリオサイトなどでアピールするもの。
作品撮りをする目的は、企業クライアントさんにアピールするために撮る写真なので、モデルに有償で依頼をすることもあれば、スタジオ代を負担することもあります。いわゆる、自己投資と言うものです。
なので『作品撮り』は、仕事を受けるための素材創りだと、僕は考えています。
作品撮りのモチーフは人物とは限らず、風景だったり、建造物だったり、商品だったり、色々なものが対象になっているために『目的が曖昧な撮影』だと思われやすいと言うことです。
では、僕なりの『作品撮り』を紹介すると、次のような2つのジャンルに分けることができます。
人物を被写体にして、アートな世界観をアピールした写真。
モデル : レナさん
僕は以前、デジタルアート作家として活動をしていたので、その表現を活かしたアートな人物写真で『写真家リョウらしさ』を、ポートフォリオサイトでアピールしています。
そしてもう一つは、雨の日の写真です。
憂鬱になってしまう雨の日ですが、雨の日の魅力を写真で届けたくて始めた雨の日の写真。
僕も以前は雨の日が嫌いでした。その理由は、子供の頃にゲリラ豪雨の日に目の前に雷が落ちたことがあり、ショックで『雨の日=雷』の印象が強くなってしまったからです。
だけど、写真家になって風景を撮り歩くようになって、たまたま雨が降った日に写真を撮り歩いていると、その写真の世界観に心がリフレッシュされたことがありました。
そこから雨が好きになり『雨の日の写真を撮り歩く写真家』として認知されるようになってきました。
そのおかげもあって、雨の日の作品をお届けするためのブランドサイト『雨の雫(あめのしずく)』を立ち上げることができました。
『雨の日写真=京都の写真家リョウ』とアピールするために始めた雨の日写真。これも、僕にとっては立派な作品撮りといえます。
『ポートレート撮影』について
次に『ポートレート撮影』とは、街中でのスナップ撮影だったり、モデル写真だったり、宣材写真だったり、アーティスト写真だったり、人物を被写体にした写真撮影のこと。
僕が思うポートレート撮影は、気楽に街中を歩きながら人物を撮影するもので、ポージングをしてもらったり、恋人のように身近に感じる写真を撮ったりして、人物をメインに撮る写真の撮影を『ポートレート撮影』と呼んでいます。
例えば、下記のような写真です。
写真引用元 : PAKUTASOより

ポートレート撮影は全体的に明るく、モデルにはカメラ目線を意識して会話をしてもらうような写真という印象が強い写真です。
人物写真だけを見ると、作品撮りなのかポートレート撮影なのか区別ができないかもしれませんが、明確に区別するとしたら、
・自分らしくニッチな世界観でアピールする写真は『作品撮り』
と僕は区別しています。
企業をターゲットにするならどっち?
作品撮りとポートレート撮影の違いについて話しましたが、企業に見てもらうためには『作品撮り写真』か『ポートレート写真』のどちらでアピールすれば良いのかと言うと、自分らしい世界観を感じるなら『作品撮り写真』でも『ポートレート写真』でもどちらでも良いと言うことになります。
その理由は、人物をメインに明るく笑顔を引き出せている写真を好む企業もいれば、ほんのり暗くシネマティックな写真がイメージを好む企業もいるからです。
まずは、自分がどのような企業に見てもらいたいのか、自分らしさを出すには『作品撮り』か『ポートレート撮影』のどちらが合っているのかを考えて決めればいいんです。
僕の場合は、人物をメインにした明るくて綺麗な写真は写真家リョウらしい写真ではなく、ほんのり暗めだけど心が揺さぶられるシネマティックな写真が写真家リョウらしい写真です。
なので僕は、作品撮りをメインに写真をアピールしています。
では『作品撮り』をするには、どのように進めていけば良いのかをお話しします。
作品撮りまでの準備
作品撮りをする時に重要なことは、作品撮りをする前の準備と作品撮り当日までスムーズな流れを意識することで、自分らしく独自性のある写真を撮ることができます。
では、実際に僕が作品撮りをした時の流れを参考にして解説していきます。
作品撮りまでの大まかな流れは、このような感じになります。
- 写真のテーマを決める
- 写真のイメージをまとめる
- イメージに合うモデルを探す
- イメージに近いロケ地を探す
- モデルと衣装やヘアメイクのイメージを共有する
- 撮影スタート
- レタッチして納品する
それでは実際に僕が作品撮りをしたテーマを参考にして、1つずつ流れを見ていきましょう。
写真のテーマを決める
まず、作品撮りをする上で一番大事なのが、作品撮りのテーマを決めること。
作品撮りは、ポートレート撮影のようにその場の雰囲気で撮る写真ではなく、作りたい世界を事前にイメージして写真で表現するもの。
森感を出した僕の写真
今回紹介する写真は、森の中を彷徨っている少女を表現した写真。
森の中を彷徨う感じを表現するために、ほんのり暗めで笑顔を出さず、心のどこかに『迷い』を感じている表情を意識して撮りました。
このような写真を撮る場合、写真家の撮影技術だけで撮れるものではなく、モデルさんの魅力的な表現と演じる技術があるから撮れるもので、写真家とモデルさんの共同作品ともいえます。
これも『作品撮り』の魅力で、いわばアート作品とも言えます。
まずは、どのような作品にしたいのかを考えて写真のテーマを決めます。
写真のテーマを決めてイメージを固める
写真のテーマが決まったら、そのテーマにそってSNSなどを参考にしてイメージを固めていくのですが、僕がよく参考にしているツールは『Pinterest(ピンタレスト)』です。
Pinterest(ピンタレスト)は、Web上にある写真や画像をブックマークして、自分専用のボードにアイデアとして集めたり、整理することができる便利なツール。
そんなPinterest(ピンタレスト)についてまとめた記事もあるので、そちらを参考にしてください。
イメージに合うモデルを探す
写真のイメージが固まったら、次にイメージに合うモデルを探します。
モデルを探す方法は、InstagramやX(旧Twitter)からDMで相談するのがオススメですが、できれば有償で受けてもらえるモデルさんがいいでしょう。
その理由は、お互い作品(写真)制作に集中できるし、ポートフォリオサイトに写真を公開した際に、『こだわり』についてのアピールにもなるからです。
気になるモデルにDMを送ってみる
最近では、Instagramを使ってモデルの依頼受付をしている人もいるので、気になるモデルがいたらDMで作品撮りについて簡単な説明と挨拶を送って反応を待ちます。
「なかなか返事がこない」と焦らずに待ちましょう。
DMを送ってすぐに返事が届かないのは当たり前で、他の仕事をしているモデルもいたり、複数のフォトグラファーからのDMにも対応しなければいけないので、LINEのように早く返事が届くとは限りません。
DMはInstagramでもいいですが、できればX(旧Twitter)の方がオススメです。
InstagramのDMは、LINEのようにスマホに通知が届かないことがあり「メッセージに気づかなかった」と言う人が多いです。
X(旧Twitter)の場合は、設定でスマホのロック画面に通知の表示をすることができるので、DMに気づいてもらいやすいです。
SNSのDMから作品撮りのメッセージを送る際に、「撮らせてください」の一言だけのメッセージを送ることは避けましょう。
とても簡潔で分かりやすいですが、モデルさんからすれば「何の撮影」「なぜ私を撮影したいの?」と不安から入ってしまって、良い印象をもってもらえません。
実際にインスタのストーリーでもよく「撮影の依頼について、できるだけ詳しく教えてください」と投稿しているモデルさんも多いです。
できるだけ、
- 自分が何をしている人か
- どんな活動をしているのか
- モデルさんを選んだ理由
を、分かりやすくメッセージに添えることが大切です。
モデルさんからすれば、初対面の写真家と撮影するのは不安だらけです。
安心して撮影を受けてもらうために、できるだけどんな写真を撮っているのかを見れるように、事前に準備をしておきましょう。
あと、一方的に「相互無償で撮影します」とか「撮影してあげる」などと言ったメッセージを送るのはやめましょう。
イメージに合うロケ地を探す
作品撮りをさせてもらえるモデルが決まったら、写真のイメージに合うロケ地を探します。
ここでもモデルさんに安心してもらうために気をつけなければいけないことがあります。
- 事前に撮影許可申請をとっているか?
- モデルが公共交通機関で行きやすい場所か?
- 現地集合現地解散か?
- ある程度の人通りがある場所か?
- 屋外か室内か?
作品撮りを受けてもらう条件として、公共交通機関で行きやすい場所でなければ受けないというモデルさんも多いです。
そして最も大切なのは、ロケ地が許可申請が必要な場所なのか事前に確認すること。商用利用じゃなくても、SNSに使用する場合、撮影実績としてアピールする場合、趣味で作品撮りをする場合に関係なく撮影許可申請が必要な場所もあります。
許可申請をしていないと肖像権の侵害として反則金を請求されることもあります。
そう言ったトラブルになってしまうと、写真家だけでじゃなくモデルのイメージも悪くしてしまうので、撮影場所の許可申請の確認はとても大事です。
そう言った意味でも、必ず下見(ロケハン)をしておきましょう。
衣装やヘアメイクのイメージを共有する
モデルが決まり、イメージに合うロケ地が決まったら、モデルと作品撮りのイメージを共有して、衣装、ヘアスタイル、メイクなどの希望を伝えます。
モデルと写真家の2人だけで作品撮りをする場合は、モデルに手持ちの衣装を準備してもらったり普段通りのヘアメイクで撮影するのが一般的です。
ヘアメイクアーティストやスタイリストさんとコラボで作品撮りをする場合は、準備する部屋を借りる必要も出てくるので、最低でも3ヶ月前には撮影場所と準備する場所の確保が必要です。
撮影スタート
全ての準備が整ったら、あとは撮影当日まで予習をしておきます。
事前準備も完璧で、下見(ロケハン)も完璧、ヘアメイクについての希望も伝え、衣装も準備できている。あとはしっかりと一眼レフのメンテナンスをして撮影スタート。
下見(ロケハン)をすると、撮影ポイントまでスムーズに行くことができるし、作品撮りに集中することもできて、モデルにも安心してもらえます。
レタッチして納品する
作品撮りが終わったから安心ではなく、できるだけ早くレタッチをしてモデルに写真データを納品します。
レタッチには、AdobeのLightroomを使います。
最近だと、AIが搭載されたRAW現像ソフト『Luminar Neo(ルミナーネオ)』を使う写真家も増えてきています。
できるだけ、自然な美肌補正を心がけましょう。せっかく良い写真を撮っても、不自然な美肌にしてしまうと、人間らしさがなくなって、写真の魅力が半減します。
ほんのりとその人の肌の質感が残っている、自然な美肌補正が人間らしくてドラマチックな写真になります。
作品撮り写真を公開中
こうしてモデルさんと一緒に作品撮りをした、僕の作品「彷徨うプリンセス」を、ポートフォリオサイトで公開しています。
今回の作品撮りをさせていただいたモデルさんは、主に九州地方で活躍されている『レナさん(@rnea_1998)』。
最後に
と言うことで、『作品撮り』と『ポートレート撮影』 の違いについて話してきましたが、僕の考えは、
・自分らしくニッチな世界観でアピールする写真は『作品撮り』
と言う結論になりました。
そして、企業にアピールするならどちらが良いかと言うと、
と言うことになります。
僕が作品撮りをするのは、デジタルアート作家の活動をしていた経験を活かしたアートな写真が僕らしさがあって、それをポートフォリオサイトでアピールするためで、唯一無二の写真をモデルと共につくるためでもあります。
作品撮りをすることで自分の中にある世界をさらに広げることができ、どこにもない写真で他の写真家との差別化をすることはとても大切なことなんです。
コメント